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交渉はハードに、ハートは温かく

NRIJ交渉ワンポイントでは、Q&A形式で日頃の交渉に関するご質問や悩みにお答えしています。どうぞお気軽にご相談をお寄せください!


Question

先日のセミナーで、交渉スタイルとして「ウォーム&タフ」を学びましたが、具体的にイメージできるエピソードがあれば教えてください。

Answer

ペリーの黒船来航から1カ月半後、今度は大国ロシアが来航したとき、交渉にあたったのが勘定奉行の川路聖謨(カワジ トシアキラ)でした。

大国ロシア提督プチャーチンとの交渉にあたり、川路はわが国で最高と評される「日本刀」など、日本の工芸品を贈り物として持参しました。
「この刀は、3人並べても骨まで斬れる。重くて使いこなせないと思わないで欲しい。私はこれより2倍以上重い刀を毎日3,000回振っている」
川路は、大国ロシアに臆することなく主張すべきは厳しく主張し、時にはウィットに満ちたユーモアを交えながら粘り強く交渉していました。

何度目かの交渉を伊豆国下田で行っていた最中に「安政の大地震」が発生し、下田の町は地震と大津波におそわれ壊滅状態になりました。
プチャーチンは津波で溺れる日本人をロシア船ディアナ号で救出しますが、ロシア艦船も津波に耐え切れず大破してしまいます。
川路はロシア人の救援活動に感謝し、日本の船大工を集結しロシアの造船技術者の指導のもと、ロシアに帰国用の新艦船を建造しました。
プチャーチンはこの川路の対応に痛く感動し、そのとき交わした「日露和親条約」は、ペリーと交わした「日米和親条約」に比べて、はるかに日本に対して配慮のある内容になっています。

「交渉はハードに、ハートは温かく」といわれるエピソードの一つです。